登録美術品制度

このレベルの作品にも携わらせて頂きましたが、本日は文化庁から発表されている国民の美術品の鑑賞機会を増やすために-「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」の施行-のご紹介です。

 

国民の美術品の鑑賞機会を増やすために
-「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」の施行-

近年,我が国においても美術に対する人々の関心が高まり,美術館が増加するとともに,美術館に足を運ぶ人の数も増加しています。一方,日本国内には優れた美術品が数多く存在していると思われますが,それらがすべて美術館で公開されているわけではありません。

このような背景を踏まえ,国民の美術品を鑑賞する機会を拡大することを目的として,「美術品の美術館における公開の促進に関する法律」が平成10年6月10日に公布され,12月10日から施行されました。また,同法の施行のため,「美術品の美術館における公開の促進に関する法律施行規則」及び「登録美術品登録基準」もあわせて施行されました。

登録美術品制度とは

本制度は,重要文化財や国宝,その他,世界的に優れた美術品を国が登録し,登録した美術品を美術館において公開するものです。また,登録美術品は,相続が発生した場合,他の美術品とは異なり,国債や不動産などと同じ順位で物納することが可能となります。

登録美術品となる美術品

本制度において登録される美術品は,多くの人がその鑑賞の機会を切望しているような貴重な作品で,以下のいずれかの条件を満たしたものになります。

  1. 我が国の重要文化財や国宝に指定されている作品
  2. 世界文化の見地から歴史上,芸術上又は学術上特に優れた価値を有する作品

(具体的な登録基準は,「登録美術品登録基準」を参照して下さい)

更に,美術的な価値に加え,登録美術品は美術館において公開されることが必須の要件となっています。
構造,形式,材質その他の特徴などにより,公開及び保管に関し特に注意を要する美術品(※1)については,当該美術品を適切に公開及び保管をするための環境や要件を備える美術館(※2)と,登録美術品公開契約が締結される見込みがあることを要件としています。
なお,文化庁長官は,あらかじめ有識者の意見を聴き,申請された美術品の登録の可否を決定します。登録の可否は美術品の価格によるものではなく,美術的な価値により判断されます。なお,美術品の価格についての評価は,登録時には行いません。

(※1)公開及び保管に関し特に注意を要する美術品
・・・その構造,形式,材質その他の特徴及びその保管に係る技術の開発の状況を勘案して,長期的な公開及び保管が困難であるもの。

 

(※2)公開及び保管に注意を要する美術品を適切に公開及び保管するための環境や要件を備える美術館・・・以下の基準の全てに該当するもの

 

1

登録を受けようとする美術品と同様の種類の美術品を取り扱った経験及び知識を有する専任の学芸員(博物館法に規定する博物館相当施設においては、学芸員に相当する職員)が配置されていること。

2

美術品を適切に保存及び公開するための環境を有していること。

3

登録を受けようとする美術品と同様の種類の美術品を保存及び公開していること。

<制作者が生存中である美術品について>

 令和3年4月1日の登録基準の改正により,登録対象が拡大し,制作者が生存中である美術品のうち一定のものが加わりました。制作者が生存中である美術品については,客観的な審査を担保する観点から,従来の要件に加え,以下のすべての要件を満たす必要があります。

  1. 制作後,原則として十年を経過した作品
  2. 文化庁長官が定める美術館(※)が開催する展覧会(公募により行われるものを除く。)において複数回公開されたことがある作品

(※)文化庁長官が定める美術館・・・以下の基準の全てに該当するもの

1

博物館法に規定する「登録博物館」または「博物館相当施設」であること。国外の美術館の場合は、国際博物館会議等の国際的な機関の会員であることなど,上記の要件に準ずる資格を備えていること。

2

登録を受けようとする美術品と同様の種類の美術品を取り扱った経験及び知識を有する専任の学芸員又は専任の学芸員に相当する職員が配置されていること。

3

美術品を適切に保存及び公開するための環境を有していること。

4

登録を受けようとする美術品と同様の種類の美術品を保存及び公開していること。

【参考】

本制度の対象となる美術館について

本制度において登録美術品を公開することのできる美術館となることができるのは,博物館法に規定する

「登録博物館」または「博物館相当施設」のうちの美術品を展示する施設

に限られ,美術品の取り扱いや管理について十分な能力のある施設となります。
登録美術品を公開できる美術館に関する情報は,文化庁にて入手できます。また,万が一,美術品の登録がなされたあとに,公開予定の美術館での公開ができなくなった場合には文化庁が公開に適した美術館のあっせんをいたします。

申請した美術品が登録美術品として登録された場合

登録美術品の所有者と公開予定の美術館はその登録美術品を公開することを約した契約書を結びますが,この契約書は次の要件を満たすものとします。

  1. 5年以上の期間にわたって有効なものであること。
  2. 契約期間中は,契約者が一方的に解約の申し入れをすることができない旨の定めがあること。

また,登録美術品は,文化庁による登録後3ヶ月以内に契約美術館に引渡される必要があり,所有者の自宅などに置いておくことはできません。契約美術館において,登録美術品を適切に保管,展示するとともに,毎年の保管・公開計画や実績を文化庁に報告することとなっており,所有者の方は安心して美術品を預けることができます。

登録美術品による相続税の物納の特例措置

相続税法上,相続税を金銭で納付することが困難な場合,金銭以外の相続財産で相続税を納付できるものとされていますが,その際の優先順位は,以下の通りです。

第1順位

①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等※1
※1 特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除く。

②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

第2順位

③非上場株式等※2
※2 特別の法律により法人の発行する債券及び出資証券を含み、短期社債等を除く。

④非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの

第3順位 ⑤動産 (美術品は第三順位の動産に含まれます)

しかし,登録美術品を相続した場合には,通常の美術品とは異なり,物納の優先順位が不動産等と同等の第一順位となり,登録美術品で物納することが容易となります。(国税庁HP参照 http://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4214.htm

登録美術品の価格の評価

登録美術品の所有者に相続等が発生した場合において,その登録美術品を取得した人からの申請があったときは,文化庁はその登録美術品の価格の評価を行います。

登録美術品制度の流れ

<所有者>

○美術館との相談

○美術品の登録申請

  • 美術品の所有者は,その美術品が登録された場合に公開する予定の美術館の協力を得て,申請書類を作成し,文化庁に登録の申請をします。

<文化庁>

○有識者からの意見聴取

○美術品の登録の決定

○所有者への登録の可否の通知

<所有者>

○美術館との公開契約の締結

○登録美術品の引渡し

  • 所有者は,美術品の登録の通知を受けてから3ヶ月以内に,美術館と登録美術品公開契約を結びます。
  • 万一,契約予定の美術館と契約が締結できないときには,文化庁は契約相手となる美術館をあっせんします。
  • 所有者は,美術館での公開のため,美術品の登録の通知を受けてから3ヶ月以内に,登録美術品を美術館に引き渡す必要があります。

<美術館>

○公開計画の文化庁への届出

○登録美術品の一般への公開

○登録美術品の適切な保管

○公開状況の文化庁への報告

  • 契約美術館の設置者は,登録美術品を積極的に公開し,かつ,善良な管理者の注意を持って保管を行うことが義務付けられており,登録美術品は適切に保管・公開されることとなります。
  • 契約美術館の設置者は,毎年度,登録美術品の保管・公開計画や公開状況を文化庁に報告することとなっており,これを受けて必要に応じて文化庁は適切な公開のための指導・助言を行います。
  • 所有者は,美術館での公開のため,美術品の登録の通知を受けてから3ヶ月以内に,登録美術品を美術館に引き渡す必要があります。

<文化庁>

○登録美術品の所在情報の提供

本件問い合わせ先

文化庁企画調整課事業係

03-5253-4111(代表)

(内線3104)