本日は籔内佐斗司氏のより・・・・・
館長の部屋 第61話 アイコン(icon)其の二
奈良県立美術館館長 籔内佐斗司
「アイコン 其の一」では、スターバックスのセイレーン、ゴディバのレディ・ゴダイヴァ、NIKEのスウーシュについてご紹介しましたが、今回は、マヨネーズのキユーピーや森永製菓の有翼天使、アップルコンピュータのりんごなどの蘊蓄です。
飯の種にはならないけれど、話しの種にはなる人生の潤滑油、それを教養といいます。しばし、お付き合い下さい。 【♂♀】
1960年代の医療TVドラマ「ベンケーシー」の冒頭で有名になった雌雄記号「♂と♀」を最初に用いたのは、動植物の分類学者であるCarl von Linné (1707〜1778)。
「♂」はマスキュライン(masculine)、 「♀」はフェミニン (feminine)と読み、本来は天文学の惑星記号で、「♂」は火星、「♀」が金星を意味します。
ローマ神話には戦さと農業を司る「マルス」という男神がいますが、このマルスをイメージして作られた記号が「♂」です。「↑」が槍を、「○」は盾で、武装したマルスの姿をあらわしているとされています。
そして、ローマ神話の愛と美の女神「ウェヌス、ヴィーナス、ギリシア神話のアプロディーテー」に代表される女神が、金星の標章である「♀」になりました。また、動植物界にしばしば見られる雌雄同体は「☿」。
天文学でこれが意味する水星は、ローマ神話では「メルクリウス・Mercurius、英;mercury」。
この神は、両性具有の象徴で、最近のLGBTQの時代には、大いにもて囃されているようです。固体と液体の両方の性質を兼ね備えた水銀も英語でmercury。
【有翼天使 Cupid】 翼を生やした神の由来は大変古く、数千年前のいまのイランあたりで絶大な信仰をあつめたゾロアスター教の善神フラワシが源流の一つと考えられます。
有翼天使(Angel)は、キリスト教のカトリックだけでなく、ユダヤ教やイスラム教の聖典にも登場します。
Angelの語源は、神の意志やことばを伝える者から来ているそうで、たくさんの天使を説くカトリックでは、ミカエル、ガブリエル、ラファエルを大天使としています。
プロテスタントの教義でも、ミカエルのみ大天使と認めていて、マイケル、ミシェール、ミハエルなど欧米人男性の名前では人気ナンバーワンです。 キューピットのもとは、ローマ神話のクピドCupid(ギリシア神話ではamor)で、「情熱的な欲望」。
いつも弓矢を持っていて、思い人に求愛の矢を密かに放って恋の取り持ちをします。
このキューピットをキャラクター化してキューピーKewpieという愛称を付けたのは、アメリカのイラストレータ Rose Cecil O’Neill。1909年に彼女によって漫画化され、ビスクドールやセルロイド人形として立体化されて、世界的に大ヒット。また婦人参政権のキャラクターアイコンにも使われました。 商標として最も有名な有翼天使は、マヨネーズのキユーピー(ユが大文字!)でしょう。
キユーピーが自社の商標化したのは、1925年。ところが1998年、キューピーの版権を管理しているRose O’Neill遺産財団が、キユーピーを著作権侵害で提訴しましたが、紆余曲折のすえキユーピー側が勝訴しています。
20世紀初期のアメリカは、キャラクタービジネスが盛んになった時代で、現在まで知られる多くのキャラクターアイコンが生まれています。
大阪名物のビリケンも、1908年に米国のFlorence Pretz(1885〜1969)が意匠化して世界的ヒットしたといわれますが、現役で活躍しているのは大阪通天閣のビリケンさんくらいでしょう。
そういえばどこかキューピーに通じるものがありますね。でも私の「童子」作品に似ているのは、「他人の空似」。 【有翼天使 Angel】 森永製菓のエンゼルマークの商標は、いくつかのバリエーションがあります。
1905年以来のアイコンでは、キューピーによく似たエンジェルがTMの文字の上で逆立ちをしています。
TMは、創業者の森永太一郎氏の頭文字。1986年に作られた現在のアイコンは、下向きから上向きに変更されていますが、同社の秘められた願いが込められているのでしょうか。
仏教圏で形象化された「飛天」は、翼を持たず、天衣(てんね)という羽衣を揺らして飛行します。舞楽に登場する迦陵頻伽は、神や天使ではなく、天上界の鳥や蝶です。
楽器を奏で美しい声で歌を唄って、天界を音楽で荘厳します。羽衣伝説では、天の羽衣を盗まれたために飛べなくなった天女は、人間界で暮らすことになりました。
宇治の平等院の壁面を飾る25体の雲中供養菩薩は、阿弥陀浄土の天人ですが、翼はなく雲に載って浮遊しています。
【アップルマーク】 Apple社の商標は、てっきりAdamの林檎かと思っていたら、17世紀の物理学者Isaac Newtonが、樹の上から落ちてきた林檎にヒントを得て万有引力を発見したことに由来するとか。
たしかに同社創業者の1人であるRonald Wayneが作った最初の商標には、Newtonがリンゴの木に寄りかかって本を読んでいる図です。
しかしこれでは古くさいと考えたSteve Jobs(1955〜2011)は、1977年に新しい商標をプロのデザイナーに依頼したとか。このリンゴは、NIKEのSwoosh(スウッシュ)と並ぶすばらしいiconですが、一囓りしてあるところからもAdamのリンゴ説は捨てがたい魅力がありますね。
ちなみにApple社のMacintosh、Macという商品名は、リンゴの品種名に由来するとか。 商標にも、深い深い物語がありますね。
画像クレジット; 「ベンケーシー」のオープニング 最上級の天使であるセラフィム(熾天使) キューピー 森永製菓の商標の変遷 明治38年〜昭和8年〜昭和61年 平等院「雲中供養菩薩」 アップルコンピュータの初代商標
*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。
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