「彫刻」カテゴリーアーカイブ

やきもの

もう展覧会は終わってしましますが、本日は籔内佐斗司氏のSNSより・・・・・・・

魯山人や荒川豊蔵・・・・・板谷波山・濱田庄司・島岡達三・加守田章二・金重陶陽等、陶器の世界も奥が深くて面白いです。

 

 

 

館長の部屋 第70話

近代陶芸 奈良県立美術館館長 籔内佐斗司

一万数千年前まで遡る縄文土器は、人類史でも一番古い「やきもの」のひとつと言われています。

ただし焼成温度の低い縄文土器から、弥生時代の土師器(はじき)、古墳時代の須恵器、そして平安時代以降の陶器、近世以降の磁器という高温焼成への変遷は、中国大陸や朝鮮半島の工人がもたらしたものです。

縄文や弥生の古拙の味わいを再現した安土桃山時代の「つちもの」から九谷や有田、薩摩の精緻な色絵磁器や青磁まで非常に多彩で、わが国の現代陶磁器界は世界でもっとも豊かな種類を生み出しています。

西洋料理や中華料理のコース料理では、始めから終わりまで同じ意匠や種類で統一された食器に盛りつけられます。これは、正餐にばらばらの意匠の器を用いたら、間に合わせのようになって貧相で大変失礼になるからです。

一方、茶懐石に起源を持つ懐石料理や料亭の会席料理では、盛りつける器に一つとして同じ意匠のものはありません。

おそらく各ご家庭の食膳でも同様だと思います。これは同じ意匠の器を意図的に忌避した馳走・数寄の美学に基づきます。そして近代以降の料亭の懐石料理を完成させた北大路魯山人(1883〜1959)や吉兆創業者の湯木貞一(1901〜1997)らが、器の取り合わせを重視した結果、近代陶芸は料亭や料理旅館の需要で活況を呈し、各地の窯元で多くの陶芸家が輩出しました。

近代陶芸の第一期として、明治時代に外貨獲得のために欧米へ輸出された色絵陶磁器は、九谷焼、有田焼、薩摩焼などがあり、技法的に最高度に完成されて、欧米で大ブームを巻き起こしました。

そして陶工ではなく陶芸家による「陶芸」が確立した第二期には、多治見市出身で美濃焼や志野焼などの桃山茶陶を研究した荒川豊蔵(1894〜1985)がいます。

彼は、鎌倉の星岡窯における魯山人との親交を通じて食のプロデューサとしても活躍しました。また三重県の百五銀行頭取をはじめ、実業界で活躍しながら、書画や陶芸制作を愛して東の魯山人と謳われた川喜多半泥子(1878〜1963)は、荒川とともに、京都鳴滝の尾形乾山(1663〜1743)の窯跡を調査し、乾山研究に大きく貢献したことでも知られます。

こうした近代陶芸は、美術評論家の柳宗悦(1889〜1961)らが理論的後押しをした「民芸(民衆藝術)」という新しい工藝分野として発展しました。柳に影響を及ぼしたのが、ウィリアム・モリス(1834〜1896)らが提唱した英国発祥のアーツ&クラフツ運動の陶芸家で、日本にも滞在したバーナード・リーチ(1887〜1979)が有名です。

そうしたなかから頭角を現したのは板谷波山(1872〜1963)や濱田庄司(1894~1978)、島岡達三(1919〜2007)、加守田章二(1933〜1983)らが知られます。また水甕など大型の実用陶器を造っていた備前窯の再興に一生を賭した金重陶陽(1896〜1967)や沖縄の壺屋焼を復興した金城次郎(1911〜2004)も忘れてはなりません。こうした近代陶芸の隆盛に、世界に先駈けて1954年に制定された「重要無形文化財(人間国宝)」制度が大きな役目を果たしたことは外せません。

しかし、民芸運動の第一人者・河井寛次郎(1890〜1966)は、師弟関係からではなく学校教育から生まれた造形作家で、民衆藝術の作家であろうとした彼の矜持は、人間国宝を辞退したことでも示されました。 また瀬戸系の桃山陶芸の研究と再現に尽力した加藤唐九郎(1897〜1985)は、「永仁の壺」事件(1960)で知られ、非常に精巧な古瀬戸の贋作を制作したことでかえって高く評価されました。

さて、奈良県立美術館では7月8日から9月3日まで『富本憲吉のこれまでとこれから』展を開催いたします。作家の個性を強く主張した富本憲吉(1886〜1963)は、奈良県生駒郡安堵町の大地主の家に生まれ、東京美術学校で建築や室内装飾を学び、アーツ&クラフツ運動に大きな影響を受けました。陶芸は、バーナード・リーチから刺激を受け、各地の窯元を訪ねました。

そして楽焼きに始まり、李朝の影響を受けた白磁、1926年から世田谷に窯を移してからの白磁の色絵付けが花開いた「東京時代」、そして戦後には京都に窯を築き、金銀彩を用いた絢爛な作陶様式を完成させました。

現在、百貨店の食器売り場に並んでいる清水焼や京焼には、富本の意匠を承け嗣いだものがたくさんあります。また、安堵町の彼の生家は、「うぶすなの郷」として一日二組限定の料理旅館として再生されており、本展ではその建物の紹介もしています。ぜひこの機会に、近代陶芸の巨匠・富本憲吉の全貌をご覧下さい。

図版クレジット) 日本のやきものマップ(日本セラミックス協会web)

 

*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。


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サカイタケルくん

本日は籔内佐斗司氏のSNSより・・・・・

宜しくお願い致します。

 

サカイタケルくん(堺市博物館) | ミュージアムキャラクターアワード2023 | アイエム[インターネットミュージアム] (museum.or.jp)

籔内佐斗司氏談
本日正午から、ミュージアムキャラクターアワード2023の投票が開始されました!
籔内佐斗司の制作した堺市博物館公式キャラクター「サカイタケルくん」もエントリーしていますので、ぜひ皆様の一票をお願い致します!

 

*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。


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三世に生きる

本日は籔内佐斗司氏のSNSより・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

館長の部屋

第68話 三世に生きる

奈良県立美術館長 籔内佐斗司

現代人の多くは、死をもって自分の生の終着点だと考えています。

しかし、この考えがひろく定着したのはそれほど古いことではなく、今でも世界ではさまざまに説かれる死後の世界を多くのひとびとが信じています。  カトリックでは、現世に生きた者が死ぬと、天国か地獄へすぐに趣くのではなく、その中間にある「清めの世界」である「煉獄(れんごく)」へ行くと説きます。煉獄とは、終末の日にキリストが再臨する時、いままでに死んだすべてのひとびとが墓から蘇り、天国へ行くか地獄へいくかの最後の審判を受けます。

最近流行りのゾンビ映画は、その地獄行きの死者が煉獄から蘇って地獄へ引きずり込もうとする姿です。

しかし、輪廻転生や火葬の文化を持ち、仏教的死生観を持っている私たちには、よたよたと歩き回るゾンビは、恐ろしいと言うよりお化け屋敷レベルの滑稽な姿にしか映りません。

イスラム急進派は、ジハード(聖戦)で死ねば天国へ行けると説いて、貧しいひとたちに自爆テロを教唆します。

私たち日本人も、つい80年前には「七生報国」を信じて神風攻撃をしたことを忘れてはいけません。

私の父母の世代は、お盆や年会の法要やお彼岸のお墓参りは、正月ととともに重要な年中行事でした。

しかし、戦後に人口が都市に集中し地方が空洞化することによって、先祖から引き継いだ農林漁業などの家業が衰え、祖先や産土との繋がりが疎遠になりました。

恥ずかしながら私も、お盆の法要も父母の墓参りも、まったく熱心ではありません。

高度成長期に家制度が崩壊し、夫婦と子どもが中心の核家族主義になり、現代ではその核家族すら解体して親子の絆よりも個人の意志が尊重されるようになりました。

しかしいまだに「三世」に代わる思想を持たずにきてしまったことが現代人の不幸ですし、宗教への免疫がない若い人たちは、怪しげな新興宗教に簡単に洗脳されてしまいます。

またわが国の宗教界でいまもっとも深刻な問題は、寺院に人が寄りつかなくなり、檀家制度による先祖供養で寺や墓地の維持ができなくなっていることです。

歷史的には、日本人は輪廻転生を前提とした「前世・現世・来世」のなかで生きてきました。

しかし、生まれ変わりを前提とした「後生(ごしょう)」「二世(にせ)の契り」といったことばは、浄瑠璃や歌舞伎に辛うじて残っているばかりです。

大乗仏教では、すべての存在の生成と消滅は、必然でもなく偶然でもなく、「因縁・Nidana」によって生起されると説きます。

そしてこの三世のそれぞれに仏が割り振られています。前世は薬師如来、現世は釈迦如来、来世は阿弥陀如来です。もとをたどれば「ブラフマ(過去・生成)・ヴィシュヌ(現世・維持発展)・シヴァ(未来・破壊)」という時間軸を持ったヒンドゥー教の三神の連環「トリムルティ」が起源と考えられます。

この点、キリスト教などの一神教では、全ては神の意志による必然と考え、死んだ後に別の人格や動物に生まれ変わるという教義はありません。

彼らにとって肉体のすべてが失われる火葬は、最期の審判での蘇りができなくなるために大いに忌避したそうで、ナチスドイツの強制収容所で遺体を焼却処分したことは、われわれ日本人が想像する以上の宗教的恐怖感を持って受け止められたといわれます。

しかし公衆衛生や墓地の不足も手伝って、1965年にローマ・カトリック教会が火葬を正式に認可して以来、火葬が盛んに行われるようなったそうです。  近代医学において、エビデンスと数値主義による普遍性を学問の基礎とし、実証できない死後の世界はないものとして組み立てられてきました。

しかし日本の文学や芸能や藝術は、三世を生きることを大前提に成立してきました。

過去世に恥ずかしくない生き方をし、来世に相応しい生き方をするために現世を生きる死生観を教え、そののち「健康で幸せな生」と「安らかな死」を考えさせる人文的学問や思想を取り戻すべきではないかと思います。

私はいま「ビューティ&ウエルネス専門職大学」において、健康で美しく幸せに生きることに取り組んでいます。

しかし、少子高齢化の結果として必ず訪れる大量の病人と死の時代を目前に、医学界、思想界、宗教界、経済界が一丸となって、幸せかつ穏やかに死を受け入れ、やすらかに来世を迎える準備をする現代的作法を研究する学問が、今緊急に必要とされていると思います。

図版クレジット) ミケランジェロ 「最期の審判」(システィナ礼拝堂) 河鍋暁斎の「地獄極楽図」(東京国立博物館) アウシュビッツの焼却炉 ヒンドゥー教のトリムルティ 釈迦涅槃図

 

 

*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。


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電柱と電線

本日は籔内佐斗司氏のSNSより・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

館長の部屋

第67話 電柱と電線

奈良県立美術館館長 籔内佐斗司

ようやくコロナ騒動が終息したので、数年ぶりで岩手県の陸前高田へ行ってきました。

ご存じの通りこの街は、2011年3月11日の東日本大震災の津波でほぼ全滅しました。

美しい高田の浜辺を覆っていた無慮数万本の松林が、たった一本を残して流失したことでも知られます。

そこで、200年以上高田の街を守ってきた松をただ朽ち果てさせたり燃料用チップにするのは忍びないと、地元有志や長野県の善光寺の僧侶らが慰霊の仏像を造ろうと立ち上がりました。

そして、当時私が勤務していた東京藝大大学院文化財保存学に相談があり、直径1メートルほどの巨木を使って十体ほどのお地蔵さまを数年がかりで造らせて頂きました。

それ以来、地元の方とずっと親しいご縁が続き、12年間の復興の様子を毎年継続して観察するという希有な体験をすることになりました。

さて民主党政権下の国、県、市が急拵えで策定した復興事業は、今から思えばかなり拙速が目立ちます。

被災地全体を5メートル嵩上げする事業のために、周辺の山の木を伐採して、山肌を削った土砂が巨大なベルトコンベアを使って運ばれました。

地元では、山を削ったことで気仙川への土砂の流入や山津波を心配する声もありましたが、急ぐ復興事業の前にかき消されたというのが実情です。

案の定、流れ込む土砂によって海草は年々減り、牡蛎もウニも小粒になり、収量は減少し続けているとのこと。

市街地の嵩上げ工事と併行して進められたのが、高さ10メートルという巨大防潮堤で市街地を囲うという計画でした。

地元民からは「街から海が見えなくなる」と反対する声が当初からありましたが、事業は強行されました。

冷静に考えれば、百年に一度といわれる10メートルの津波の被害を防ぐのなら、ヘリポートを備えた高さ15メートル程度の避難施設を兼ねた公共の建物を300メートル程度ごとに10棟ほど建てれば、景観を大きく損ねずに、しかも格段に安価な建設費で、しかもおしゃれに復興事業ができたのではと思いましたが、後の祭り。

やがて嵩上げ事業が終わると、新しくできた地盤の上に道が造られました。そこでまず目を疑ったのは、新しく造られた道路に沿って、電柱が林立し始めたことです。

「だれもが帰って来たくなる、移り住みたくなる街」を造るべきだったのに、まるで終戦後の昭和の街のように電柱と電線が街を覆い始めるという信じられない光景に呆然としました。

さすがに街の中心部にできた公共施設や商業施設の周辺から電線の地下埋設が実行されましたが、その周辺の広大な造成地は松原の代わりかと思うほど電柱が林立しています。

電柱と電線の地下化をおこなった未来志向のモデル都市を造る千載一遇のチャンスを失ったことは、残念だなあと思います。

わが国では、超が付く高級住宅街であっても電柱が列を成し、電線が張り巡らされていることが日本の七不思議のひとつに挙げられます。

世界の大都市の電線の地中化率は、100%の欧米は別格として、香港100%、台北95%、ソウル49%に比べて、東京23区8%、大阪市6%はどう考えても異常です。

海外の友人からは、「いくら富裕層が住んでいても、電信柱や電線が見えるような街はプアマンズタウンだ」と厳しいことを指摘されます。

さて、人類が火を日常的に使い始めて15万年程度と考えられています。その間、樹木を燃やすことでエネルギーを得ていましたが、18世紀ころから化石燃料が起こす蒸気エネルギーを利用するようになり、それ以降、人類はいかに効率よく発電するかに心血を注いできました。

技術革新のたびに、生活は便利に快適になり、人口は急激に増加しました。しかし、20世紀になって夢のエネルギー源と思われた原子力発電が、スリーマイル島やチェルノブイリ、福島第一原発の事故によって暗雲が立ちこめ、現在は太陽光、風力などの脱炭素エネルギーを用いた発電が注目されています。

しかしこれらとて太陽光パネルや巨大風車などの発電設備を造るのに要する莫大な環境負荷が解決されたわけではありません。

そして永らく石油による内燃機関が移動手段を支えてきましたが、近年は自動車の世界シェア獲得競争でHybridかEVかで、きれい事だけではない理由で揉めているようです。

しかし、今私たちが地球上のすべての生物の存亡をかけて取り組むべき最重要課題は、たんなる「脱炭素」ではありません。

それは、増えすぎた人類の数をどうやって減らし、快適になりすぎた生活レベルを引き下げながら、「脱電力」を進めるべきだと私は考えます。

このことについては、また稿をあらためて。 図版クレジット)

新しく造成された高田市街地の道路に林立する電柱と電線 山を削る巨大ベルトコンベア 無電柱化されたロンドンの街並み 世界の大都市の電線地中化率 港区麻布の街並み 世田谷区成城の街並み

 

*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。


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館長の部屋

第66話 技術革新 奈良県立美術館館長 籔内佐斗司

19世紀の産業革命以来続いている近代産業の技術革新は、常に民生利用と軍事利用の両輪で発展してきました。

18〜19世紀の戦場は、赤や青の派手な布地に金モール、金ボタン、羽根飾りなどの華美な装飾を施した軍服に身を包んだおもちゃのような兵士が隊列を組んでぶつかり合う「美しくも野蛮な戦場」でした。

そこで用いられた銃剣を付けた単発式の長い鉄砲を一発撃ったあとは、その銃を槍や棍棒のように振り回す古代とかわらない戦い方でした。

それが20世紀に入ると、迷彩色の軍服に鉄兜で這いずり回り、連発銃や機関銃、手榴弾、毒ガス、榴弾砲、火炎放射器による塹壕戦や、飛行機や戦車まで登場した泥と血にまみれたアナログ技術の大量殺戮による「悲惨なだけの汚い戦場」になりました。

その流れを引き継いだ第二次世界大戦からベトナム戦争までは、殺戮の技術がますます効率的になり、死傷者の規模が飛躍的に増大しました。

その後、中東で繰り広げられた戦いは、電子制御による戦車戦、空中戦へと進化し、特に「砂漠の嵐作戦(1991)」は、多国籍軍にとっては「血を流さないスマートな戦場」でしたが、イラク兵にとっては「一瞬にして炭になる無慈悲な戦場」でした。

そして、現在ウクライナで行われている戦いは、精密誘導兵器の実験場と化しています。第二次世界大戦末期に開発され、広島と長崎で使用された核兵器は、その後、米ソの理性による「恐怖の均衡」によって戦場では一度も使用されてはいませんが、米ロの影響力が低下し、核保有国が拡散した現在、いつどこで使用されてもおかしくない状況が続いています。

そして現代は、宇宙とサイバー空間という新しい戦場へと拡大しました。そこには、近代以来のアナログ技術ではなく、エレクトロニクスとデジタル、バイオテクノロジーという目に見えない恐怖が支配しています。

とくに「人工知能・AI(artificial intelligence)」は、軍事と民生の区別なく、すでに私たちの日常生活の隅々にまで浸透してしまいました。

私たちが買い物をする際にしつこく「〇〇のポイントカードはお持ちですか?」と訊かれますが、そうして集められた天文学的な個人情報を整理分析し管理することを可能にしているものこそが、日進月歩の「AI」技術に他なりません。

最近、ビル・ゲイツ氏は、「AIの発達は、インターネットや携帯電話の導入と同じぐらい基本的なことだ」と述べています。私たちの未来、いやすでに現在は、AIの活用なくしては成り立たなくなっているのです。

1990年に写真を加工するソフトのAdobe Photoshopが販売され始めた頃、「これからは写真が信用できなくなる時代が来るね」と話したのを覚えていますが、今や、映画や映像の制作においてAIを活用した動画編集ソフトは不可欠になり、ネットニュースにはまるで現実と見間違う虚構の映像で溢れかえっています。

2001年から運用が始まったWikipediaは、その記事の信憑性や不確実性が問題となって、学術論文を執筆する際の出典や引用には認めないという暗黙の了解がありました。

しかし20年経って、ウィキベディアやグーグル検索の信頼性は飛躍的に高まり、一次資料、二次資料まではいかないものの、かつての百科事典に準ずる扱いになりつつあり、私もちょっとした調べものには大変重宝しています。

また2022年に開発されたばかりのOpenAI社のChatGPT(Generative Pre-trained Transformer、AIが事前学習して、質問に対して自然な言語で自律的に答えるソフト)は、学術、言論、報道、教育界のすべての分野に、大きな衝撃を与えています。

その信頼性は日増しに改善されているとはいえ、善悪を判断しないAIが呼吸するように虚偽情報を垂れ流すこの機能を、誰が制御できるのでしょう。

自我の形成が脆弱といわれている日本人が不用意にこのソフトを利用すると、その性善説を疑うことなく信じこんでしまうのではないかと心配です。なにしろ今頃になって、文科省が初等教育でプログラミング教育に躍起になっているほどデジタル音痴の国なのですから。

多くの日本人は、人とのコミュニケーションや学術、平和産業への応用に興味があるようですが、AIは確実に軍事分野でものすごい進化を遂げています。それは、従来の戦争の概念や社会を根本から覆す可能性を秘め、人類存亡に関わる技術でありながら、それを制御する技術も思想も国際的な合意も、その進化の速度に追いついていないことがとても不安です。

『2001年宇宙の旅』(1968)で提議されたAI・HAL-9000に倫理観を持たせる方法は、果たして見つかるのでしょうか?

「人類が幸せに生き永らえるために、AIを捨て去る方法は?」とChatGPTに尋ねたら、どんな答えが返ってくるのでしょうね。

図版クレジット 19世紀中頃の英軍兵士の軍装 映画「1971」の英軍兵士 OpenAi社のChaptGPTの宣伝 Chapt GPTのデモによる模範解答 『2001年宇宙の旅』のHAL-9000のインターフェイス

 

*画像・内容は籔内佐斗司氏のSNSよりお借りしました。


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